今回改修工事が行われることになったのは1950年代に建てられた産業用の建物。それはガレージやオフィスとして使われていた。建物に見られたのは外壁の傷み、そして取り付けられた手すりやシャッターの錆びつきなど。打ち捨てられた建物の雰囲気を漂わせ、快適な住まいへと変えるのは簡単でないように感じさせた。そんな建物のリノベーションを手掛けたのは、ロンドンを拠点に活動する建築設計事務所Patalab。彼らが手がけたリノベーションで建物は見違えるほど生まれ変わっている。
建物の外観は美しくなっている。建物を覆っていたレンガは取り替えられ、光沢のある新しいものに変えられている。また産業用の建物が持つ重苦しい雰囲気をかき消すように取り付けられたのは建物外部の照明。軽やかな印象を加えて、都会的な雰囲気を生み出している。
建物内部の以前の状態は空家のような状態だった。むき出しの天井に乱雑に伸びる照明の配線。壁紙は剥がれ落ち、荒んだ雰囲気を作り出している。そこには心地よい空間などなく、天井や壁など大規模な改修工事が必要となっていた。
リノベーション後の建物にあるのは明るく開放的な空間。壁は一部の部分を除いて白色にまとめられ、照明は壁を輝かせるように光を放っている。ただし以前の産業的な空間が失われているわけではない。壁となるのはレンガ。それは壁の背後にあったもので、今は表に出され、建物の歴史を伝えてくれる。また床のコンクリートは建物がかつてガレージであったことを気付かせてくれるだろう。
外観同様に建物内部でも重苦しい雰囲気を打ち消すことが考えられている。天井に取り付けられたのは蛍光灯でなく、暖かみを感じさせる明かり。そのため黄色の明かりは白色の壁の上に広がり、心地良い雰囲気を生み出す。また天窓や窓からは暖かい自然光が射し込み、この空間から重苦しさを感じることはないだろう。
白を基調にした空間で大きなアクセントとなるのは木で作られた階段。白色の壁や灰色のコンクリートとは対照的に木の茶色が存在感を見せている。その自然が生み出す色は明るい空間をより一層暖かくする。そしてガレージが持っていた独特な雰囲気を掻き消してくれる。このようにリノベーションを経て建物は生まれ変わり、ここでの心地良い生活を可能にしているのだ。