密集した住宅地での住宅計画で必ず課題になるのがプライバシーと採光の確保。カーテン閉めっぱなしも嫌だし、できれば明るい住空間と庭も欲しい。そんな希望を叶えてくれる住まいを手がけたのは山縣洋建築設計事務所。階段にパンチングメタルを使うことで家全体に自然光が行き渡る内部空間、そしてルーバーによってプライバシーを確保した外部空間が魅力的な住まいです。
様々な築年数の住宅が建ち並ぶ典型的な住宅地にある敷地は、3方向を隣家に囲まれ、南側が道路に接しています。十分なプライバシーや屋外空間を確保するのが困難な立地ですが、実はしっかりと南側に庭空間を設けているんです。3階建ての建物の各階には屋外空間を配置し、ピッチを変えたダークブラウンのルーバーで一面を覆うことで、通りからの視線を程よく遮りつつプライベートな屋外空間の環境を調節。光と影が作り出す様々な表情を楽しめ、外観のアクセントにもなるルーバーがひと際目立つ外観です。「都市と緩やかに繋がる個性的な住まい」も透過性のあるマテリアルで豊かな住空間を構成するユニークな住宅です。是非ご覧ください。
玄関を入ると北側の壁に沿って階段を設置。白のパンチングメタルの階段が3層分を貫くトップライトの光を下階まで透過させ、見事に採光を確保しています。ダークな色調と明るい白のマテリアルがメリハリのある空間を演出し、パンチングメタルを介して光と影が作り出す様々な表情がポエティカルなシーンを生み出します。階段の手すりにもこだわりが見られるデザイン性の高い住まいです。
こちらはキッチン。背後のインナー窓からは階段を行き来する人が見える遊び心のあるデザインがユニークですよね。料理をしながら家族とのコミュニケーションが持てるアイランド型のキッチンも白とダークブラウンで統一。取っ手のないすっきりとした扉や引き出しがモダンで、動線的にも使いやすそうなデザインが目を引きます。こちらのフロアは掃き出し窓を開けるとウッドデッキのテラスとフラットに繋がり、外部と一体感のある空間になります。
さらに階段を上がって上階を見てみましょう。段差を持たせた居室です。外壁を覆うルーバーが周辺環境との程よい距離感を作り出しています。ダークブラウンの美しい木の素材を使った収納やカウンター、そしてデザインにこだわりが感じられる階段の手すりなど細部に渡って上質な空間を作り上げています。床面の隙間を介して下階のダイニングキッチンとも緩やかに繋がります。
最上階に続く階段空間はトップライトと正面の開口からの光に包まれ、ポエティカルな雰囲気を漂わせています。北側は開口や採光の取り方が難しいのですが、トップライト+パンチングメタルの階段によって見事に十分な採光を家全体に行き渡らせています。住性能だけでなく心豊かにしてくれる変化に富んだ空間構成とハイクオリティな仕上げによって、感性を高めてくれるような住まいが生まれました。
1階の玄関の横には浴室を設置しています。前面道路に面しているにも関わらずピッチの狭いルーバーを採用することで、プライバシーをしっかり確保。緑豊かなシンボルツリーと白い砂利石で構成される情緒たっぷりの坪庭を眺めながらのバスタイム、羨ましいですよね。この坪庭は右上はキッチンのあるフロアのテラスと繋がっており、立体的な広がりと繫がりが感じられるデザインを採用。密集地に計画された都市型住宅とは思えないくらい開放感のある豊かな住まい、是非参考にしてみてくださいね。