関東大震災を乗り越えた、築96年の古民家再生リノベーション

古民家再生「光と風が透る住まい」, アトリエきらら一級建築士事務所 アトリエきらら一級建築士事務所
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住宅の平均寿命が30年前後と言われているこの時代で、古民家と呼ばれている家は築80年、100年を超える貴重な存在の建物もあります。その時代の危機や住まい手の変遷など、いくつものハードルを乗り越えてきた古民家は、ただ時を重ねただけではない思いが詰まった風格がたまりません。今回ご紹介するのは、大正時代に地元の棟梁や石工によって建てられた築96年の古民家再生プロジェクト。およそ100年を迎えようとしているこの家は、建築直後の関東大震災を乗り越え今に至ります。改築や増築などが重ねられながら、江戸時代から受け継がれている欄間や建具も残る姿の家を、アトリエきらら一級建築士事務所が丁寧に再生をさせ蘇らせました。

Before:改装前の外観

どっしりとした入母屋の屋根に、下屋のある伝統的な外観の家でした。広い敷地に佇む姿はおよそ100年もの間、改装を重ねられ隠れてしまった趣もそこかしこに感じ取れます。

After:居住性と温もりを叶えた外観

古い家では通常取り付けられているシングルガラスのサッシは、熱や冷気を通しやすく住まいの居住性を損なう要素となります。今回のリノベーションで、古いサッシは全て木製のペアガラス性のものへと入れ替えがなされました。間取りやプラン変更に伴い、窓の配置も調整。必要な場所へ効果的に配置をするように整理をした結果、外観の見栄えも向上しています。外観の木製建具は温もりと高級感のある雰囲気を添え、古民家の風格と価値を高めるファサードに生まれ変わりました。外壁は何度も改装が重ねられ、趣のない板金で仕上げられていたものは漆喰と下見板貼りの自然素材で息を吹き替えしています。建築当初の雰囲気に近づき、趣を増した存在感が魅力です。

Before:改装前の玄関土間

まるで映画に出てきそうな雰囲気の、レトロ感漂う玄関土間。広さも十分ありますが、段差も大きく上り下りには一苦労しそうです。広さがある分ゆったりとしていますが、現代の暮らしには持て余してしまうスペースにもなりがちです。

Before:改装前のキッチン

以前の時代では、キッチンは独立したスペースにありました。ダイニングテーブルはキッチンの後ろに配置され、リビングとは空間を分けていました。LDKがひとつの空間にある現代とは大きくスペースの使い方が違い、キッチン自体の配置や寸法も今とはだいぶ異なります。

After:立派な梁と素材が生きる玄関へ

リノベーションでは、解体をしつつ使う素材や躯体と、修復すべきものを建築家が見極めながら行う必要があります。改装が重ねられて、その家がもともと持っていた良さが隠れてしまっているパターンもよくあるケースです。天井裏に隠れてしまっている梁などはその典型的な例。今回のプロジェクトでは、味わいのある立派な梁が玄関にお目見えしました。吹き抜けを設けたダイナミックで広々とした玄関の空間は、まるで一歩足を踏み入れると旅館のような上品で風格のある佇まいが広がります。木の素材を使い、年月とともにまた味わいが深まっていく様を楽しむことができるでしょう。

After:趣あるリビング

障子に広縁のある空間は、古き良き暮らしを思い起こさせる趣を感じ取れます。窓の向こうに見える和風庭園の豊かな緑や紅葉は、季節の移ろいとともに暮らしを彩ることでしょう。柱に設置されている時計がレトロな時間を刻み、懐かしい音に思いを馳せながらコーヒーを楽しむのもまた一興です。アンティークの木箱をコーヒーテーブル代わりに置いたインテリアも、まるでギャラリーや古民家カフェのようないい味わいを生み出しました。時代を重ねた独特な空気感の残る、古民家でしか味わうことのできない贅沢なリビング空間です。

After:使い勝手の良いキッチン

以前は別のスペースにあったキッチンは、ダイニングとつながりが持てる場所へと設置されました。システムキッチンの採用で、現代に使う人の寸法に合い、収納力やお手入れのしやすい機能性も格段にアップしています。近くに窓や勝手口もあり、キッチンへのアクセスや風通しの面でも居心地の良さを感じられます。家電や作業スペースの動線がまとまった位置にあることで、利便性はぐんとアップしました。パントリーやビルトインの家電により収納力も抜群な上、モダンですっきりとした見た目に仕上がっています。

After:2階のホール

以前は化粧ベニヤや建材で仕上げられていた内装も、天井や建具、フローリングに無垢材がたっぷりと使われ、古民家の風情を引き出しています。木の肌触りは裸足で歩いても心地よく、みているだけで心が安らぐ仕上がりに。自然素材や新建材は初期コストを比較されがちですが、暮らしていて毎日の心地よさを感じる度合いや長い目で見て味わい、価値が深まっていく面も考慮して素材選びをするのがいいでしょう。階段の腰壁には日本らしさを感じる桜の透かし模様があしらわれ、光を通して空間をエレガントに優しく彩ります。以前は狭かった廊下を広げ、歩きやすく風通しの良い空間に再設計されています。

【リノベーションについては、こちらの記事でも紹介しています】

※ リノベーションのメリット

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